なぜフランス市場なのか
酒類国内市場の成長に限界があることは誰しもが理解しています。世界的な日本酒の認知向上を考慮すれば、海外市場へ目が向くのは当然であります。本来日本酒は、ワインと同じように土着性の強い飲み物です。輸送手段や保存技術の発展以前、その土地の米と水、その酒蔵に住み着いた酵母により醸し出された日本酒は、その土地の郷土料理とともに生産地で消費されていたのです。
フランスは日本と同じように食中酒の食文化として、懐石料理の文化なども取り入れ高度に発達してきました。特に料理とワインのペアリングにこだわる由縁はこのことにあります。しかしフランス国内のワイン消費減少が一因となりボルトーが米国市場を目指した時期がありました。米国の愛飲家たちはワインをスピリッツやリキュールのように楽しむ傾向が強いため、フランス国内からケチャップワインなどと呼ばれ大きな批判を浴び敬遠されるようになったのです。この反省から、よりテロワールを感じることのできる自然派ワインが誕生し現在に至っているのです。
現在フランスでは大手メーカーのあらゆる種類の日本酒が流通しておりますが、今後はより地域性や個性のある日本酒が求められています。2017年からはフランス人だけが審査員を務めるコンクール「クラマスター」が開催され、地域に根ずいた手仕事の中小の蔵元が高く評価されるようになりました。過去、横浜港からフランスへ輸出された美術品がジャポネスクと呼ばれ、アール・ヌーヴォーや印象派などの新しい芸術様式を生み出したように、日本酒もフランスを通して世界に羽ばたく可能性が期待されます。