ワインの温度管理

ワインの温度管理

保管温度は、12〜15℃

ワインの保管温度と、飲み頃温度は違います。保管温度は12〜15℃で、どんなワインでも一緒です。一方飲み頃温度は、そのワインを美味しく楽しむ温度のことで、ワインの種類や状態によってバラバラです。詳細は種類別の飲み頃温度の頁をご覧ください。この頁では保管温度について解説します。

ワインは瓶の中でも生きていますので生鮮食品と同じように温度管理して扱わなければ、そのワインの真価は発揮しません。特にワインは、寒いのも暑いのも苦手で、温度変化はワインにストレスを与えます。ワインの保管は、リラックスして熟睡できる寝室に寝かせることで、眠っている時のゆっくりした呼吸を妨げないことで、ワインの老化を抑制して美しい熟成を手助けすることです。これは我々のアンチエイジングと上質な睡眠の生理関係と同じことが言えるのです。

ワイン産地の地下セラーの温度が理想的です。シャンパーニュ地方の地下セラーは10℃程度。ブルゴーニュ地方では11〜12℃程度。ボルドー地方では13〜15℃程度。バローロやバルバレスコなどのピエモンテ地方では14℃程度です。

ワインの熱劣化についての実証実験・フィラディス実験シリーズより

数少ない優良なワイン輸入商社では、ワイナリーからワインをピックアップしたところから、船での輸送はもちろん船積みを待つ間などの僅かな時間も常に温度管理を徹底し、細心の注意を払っています。全ては熱によってワインの美味しさが損なわれるのを防ぐためです。

今回の実験で解明するポイントは以下の3つです。

  1. 熱が入ったワインの味わいはどのように変化するのか?
  2. 高温にさらされる時間やその温度によって劣化度合いは変わるのか?
  3. 一度劣化したワインは時間と共に回復するのか?

実験方法

熱によるワインの劣化がどの温度帯から起きるのか。下記の生活環境の温度を想定し、ワインを湯せんして検証しました。湯せん時間は、1時間と8時間の2パターン。これらの熱入れをしたワインを、15℃のワインセラーで保管したワイン(以下、基準ワイン)と比較して、どのような変化があったのかを検証しました。また、熱入れをしてから2ヶ月間セラーで休ませたワインも基準ワインと比較し、時間経過により回復するかどうかも検証しました。

温度条件

  • 30℃:夏の日陰の温度
  • 35℃:夏の直射日光のあたる場所
  • 50℃:夏の炎天下の車内(駐車場の車内)

試験に用いたワイン

  • スパークリング: N.V. Cremant de Loir Cuvee St. Gills / Domaine Dutertre (仏・ロワール)
  • 白: 2013 La Closerie des Lys Chardonnay / Ch. Antugnac (仏・ラングドック、合成コルク)
  • 軽快な赤: 2013 La Closerie des Lys Pinot Noir / Ch. Antugnac (仏・ラングドック)
  • 重厚感のある赤: 2013 Conde de Alicante Cabernet / Bocopa (西・アリカンテ)

実験結果

実験① スパークリング

30℃×1時間「香り」「果実味」「余韻」が変化
35℃×1時間「香り」「果実味」への影響が顕著。「余韻」はまとまりが悪い
50℃×1時間ワインとして受け入れがたい状態
8時間の熱入れそれぞれの変化レベルが一層強くなる。えぐみや苦みが出てきて、抜栓後数日経った泡の印象
回復したのか30℃と35℃ではスケールの小さい別物のワイン。50℃では回復は見られず、腐敗香やえぐみはそのままで酸化劣化

実験② 白

30℃×1時間はつらつとしたフレッシュさが弱くなる
35℃×1時間「果実味」が抜けて水っぽさを感じる味わい
50℃×1時間「果実味」が劣化し、苦味を感じる
8時間の熱入れ「果実味」が抜け、メリハリのないワイン
回復したのか抜け落ちてしまった「果実味」は戻らず。2ヶ月休ませても回復なし

実験③ 軽快な赤: La Closerie des Lys Pinot Noir / Ch. Antugnac

30℃×1時間微妙な変化
35℃×1時間劣化のニュアンスが格段に感じられる。ベリーの「香り」は消える
50℃×1時間ワインとして受け入れがたい状態
8時間の熱入れ30℃から「香り」と「果実味」の落ちがはっきり。35℃では更に劣化し、タンニンはざらついたニュアンス。50℃になるとお酢に
回復したのか2ヶ月経過後に30℃・35℃×1時間は微妙に回復。8時間のワインと50℃には回復なし

実験④ 重厚な赤: Conde de Alicante Cabernet / Bocopa

30℃×1時間変わらず
35℃×1時間「余韻」のパワフルさは無くなる
50℃×1時間「果実味」がなくなり、タンニンが目立つ明らかな劣化
8時間の熱入れ35℃から「香り」「果実味」が無くなり、「余韻」にはえぐみ。50℃では苦味やえぐみが強く、ワインとして難しい状態
回復したのか35℃まではある程度回復。50℃でも多少回復するが、8時間ではNG

尚、50℃の熱入れを行ったワインは、固定されているスパークリング以外、ほぼ全てのコルクがキャプセルを突き破るほど浮き上がり、液漏れも見られました。30℃・35℃では外観上は別状ありませんでした。