ワインの熟成と年数目安

ワインの熟成と年数目安

熟成しても美味しいワインの条件は、酸味の骨格がしっかりしていることです。状態の良いワインは、熟成しているにもかかわらず、爽やかで溌剌とした酸味や、上品で洗練された酸味への共感と賞賛を感じることができるのです。一般的には、白ワインより赤ワイン、並級より上級、辛口より甘口の方が賞味期限は長くなります。

シャスラやシルヴァネールなどの高級ワインには使われないブドウから造られる愛らしい酸。シュナン・ブランの酸味の表情を豊かに満たされたヴーヴレー。サヴァニャンから造られるジュラ。ブルゴーニュと見紛う果実味を表すカベルネ・フランやソミュール、そしてブルグイユなども熟成して楽しむことができます。

ワインの熟成の進行スピードを左右する要素は、産地、ブドウ品種、土壌、収穫年、醸造方法、タイプ(白、赤、ロゼ、スパークリング、酒精強化ワイン)などが挙げられます。ワインが複雑な熟成香を呈し始め味わいもスムーズになると、そのワインが飲み頃になります。その状態に至るまでのスピードがワインによって差があるのは、それらのワインに含まれる様々な要素が複雑に関与しているからで、それらを理解することにより大まかな熟成までの目安をある程度予想することが可能になります。

ワインの熟成年数の目安

ヌーヴォー半年
シュル・リー1〜2年
ロゼ1〜3年
ボルドー・白2〜5年
ボルドー・白・上級3〜10年
ボルドー・甘白3〜上級80年
ボルドー・赤4〜10年
ボルドー・赤・上級5〜50年
ブルゴーニュ・白2〜6年
ブルゴーニュ・白・上級4〜30年
ブルゴーニュ・赤2〜8年
ブルゴーニュ・赤・上級4〜30年
ヴァン・ジョーヌ7〜80年
アルザス2〜5年
アルザス・甘白3〜30年
ラインガウ2〜10年
ラインガウ・甘白5〜80年
シャンパーニュ2〜5年
シャンパーニュ・上級4〜10年
ローヌ・白2〜10年
ローヌ・赤2〜50年
日本・白2〜5年
日本・赤2〜10年

熟成スピードを左右するワイン中に含まれる要素は、1)有機酸の量。2)アントシアニン、フラボノイド、タンニンなどのポリフェノール類の量。3)残存糖分の量。4)アルコール度数。5)グリセリンなどの糖以外のエキス分の量。6)遊離亜硫酸の量で、これらの要素が高ければ高いほど熟成スピードが遅くなると考えられています。

また木樽熟成をどの程度実施したかも熟成スピードに影響を与えます。木樽に貯蔵している間は。ゆっくりと酸素が供給されるので、酸化による熟成スピードが速くなる要素もありますが、酸化されるべき要素が酸化さあれて安定化するので、以降のスピードは遅くなるという側面もあります。

さらにワイン中に含まれる要素以外の要因でも熟成スピードを左右することがあります。1)発酵方法(開放タンク、密閉タンクなど)。2)樽熟成を経た場合のその条件(樽の新旧、年月、容量、スーティラージュの頻度など)。3)輸送方法(船便、航空便、定温輸送など)。貯蔵条件(保存温度、温度変化、紫外線、振動など)があります。

ワインの熟成についての実証実験・フィラディス実験シリーズより

ワインの熟成に適した保管温度は、ワイン生産者のワインカーブの温度を根拠に12〜15℃としていまが、保管温度差でどのように熟成が違うのか検証しました。

実験概要

シャンパーニュ3種、白3種、赤3種のそれぞれ同一ロットのワインを使い、「13℃」と「15℃」のわずか2℃違いの2つの温度環境で4年間保管したものを比較テイスティングし、「色」 「香り」 「味わい」の3点で熟成感にどのくらい違いが出てくるのか官能試験を行いました。

試験に用いたワイン

  • シャンパーニュ
    N.V. Cuvee Selection / Brun Saevenay(シャルドネ100%)
    N.V. Cuvee Sainte Anne Brut / Charogne-Taillet(シャルドネ50% + ピノ・ノワール50%)
    N.V. Blanc de Noirs / Etienne Lefevre(ピノ・ノワール100%)

  • 2011 Grand Cru Wiebelsberg / Guy Wach(アルザス、リースリング100%)
    2012 Pouilly-Fuisse Vieilles Vignes / Domaine Cordier Pere et Fils(ブルゴーニュ、シャルドネ100%)
    2012 Puligny Montrachet / Francois Carillon(ブルゴーニュ、シャルドネ100%)

  • 2012 Savigny les Beaune 1er Cru Aux Clous / D’Ardhuy(ブルゴーニュ、ピノ・ノワール100%)
    2012 Gevrey Chambertin / Domaine Duroche(ブルゴーニュ、ピノ・ノワール100%)
    2012 Fleur de Clinet / Chateau Clinet(ポムロール、メルロー100%)

実験結果

色合い

赤は、15℃で保管されていた方のエッジが、ややオレンジがかった印象。シャンパーニュ、白にはほぼ変化は見られなかった。

香り

シャンパーニュ

13℃「フレッシュな印象」「第一アロマがより際立って感じる」「トーンが高い」
15℃「広がりがある」「イーストなど酵母由来の印象」「果実の熟度が高い」

13℃「果実の蜜っぽさを強く感じる」
15℃「ハーブ、シトラスが強く感じられる」「ぺトロール香がより強く感じられる」

13℃「果実のフレッシュさ」
15℃「果実の甘やかさ」「ドライフルーツやスパイスのニュアンスが若干強い」

味わい

共通

13℃「ストラクチャーがシャープで集中力が強い」
15℃「柔らかで旨みの丸みがある」

まとめ

微妙ではあるが、香りや味わいに僅かに違いがみられました。
「クオリティに於いては、大きな差が出ることはない。」
「黒ブドウより白ブドウ、南より、北の産地の方が僅かに違いを感じやすい傾向。」
「13℃に比べ、15℃の方が保管期間4年で飲むのであれば熟成に近付きやすい印象。」

この実験の保管期間は4年、わずか2℃近いの検証でしたが、飲む時期が決まっていないワインコレクションとして長期で保管・熟成をする目的であれば低めの13℃での保管。熟成した頃にワインを飲み切るという目的であれば15℃での保管といった、ワインのあるライフスタイル別に保管温度の設定を1℃単位で変えることができる運用方法が可能なのは「ロングフレッシュ」の強みです。