ワインの香り

ワインの香り

故郷の香り

ワインは視覚、嗅覚、触覚などの全身の感覚を総動員して刺激を感じ、味わいとそのワインのテロワールを味わうものです。ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァランは、「感覚とは我々がそれによって外界の物事と関係をつける諸器官である。」と著書「味覚の生理学」で説いています。

ワインには様々な香りを感じます。ワインの香りには、ぶどうが本来持っている最初に感じる香り「第1アロマ」、醸造方法や発酵が由来の2番目に感じる香り「第2アロマ」、そしてワインが熟成することで3番目に感じる香り「ブーケ」があります。

ぶどうの木は地中深く根を下ろします。一番深いところからは、様々な鉱物で構成された岩肌に磨かれた地下水に含有されるミネラルを吸い上げ、浅い土壌からは、ぶどうの木の隣で咲き誇る、例えばスミレと同じ養分を吸収し、ぶどうの果実に凝縮するのです。科学的には花を感じる香りは醸造中に生まれますが、シノンのぶどう畑の畑道にスミレが咲き誇り、遠くに古城が微に浮かび上がる情景を想像することは、テロワールを感じる素晴らしい体験ではないでしょうか。こういった我々の創造力を掻き立ててくれる唯一の飲み物はワインだけなのです。

香りの要素

第1アロマ
グラスをスワリングする前の香り
原料となるぶどう果実に由来する香り。
・果実、花、草木、スパイスなど
第2アロマ
グラスをスワリングする後の香り
発酵や醸造方法などによって生まれる香り。
・低温アルコール発酵:キャンディ、吟醸香
・マセラシオン・カルボニック:バナナ
・マロラクティック発酵:バター、クリーム、生のアーモンド、杏仁豆腐
※発酵からあまり時間が経っていない、若い状態のワインに感じられ、空気接触とともに薄れてゆく。
ブーケ
口に含みながら空気を吸い込んで(グリマージュして)感じる香り
木樽内、及び瓶内熟成によって現れる香り。
・産膜酵母によるフロール熟成した白ワインや貴腐ワイン:ヘーゼルナッツ、くるみ、蜂蜜、カラメル
・赤ワイン:紅茶、タバコ、枯葉などの植物。きのこ、腐葉土、森の下草などの土壌。干し肉、熟成肉、なめし皮、ジビエなどの動物。木樽熟成による、ヴァニラ、ロースト、丁子、ナツメグ
・長期熟成したスパークリングワイン:酵母自己分解による、トースト、きのこ、ブリオッシュなど